省庁別に見る、日本の143兆円概算要求(令和9年度)
令和9年度、各省庁の概算要求は過去最大の143.07兆円。要求が130兆円を超えるのは初めてです。省庁別の内訳、増加の中身、そして新設の「強く豊かな日本」投資枠を、インタラクティブに読み解きます。
令和9年度、各省庁の概算要求は過去最大の143.07兆円(約9,540億米ドル)。要求が130兆円を超えるのは初めてで、4年連続の過去最大更新です。令和8年度予算比では17.0%増で、高市政権が上限を設けない**「強く豊かな日本」投資枠**、金利正常化で膨らむ国債費、そして増え続ける社会保障が押し上げています。
これは概算要求、すなわち各省庁が8月末に提出する最初の「たたき台」であり、財務省が秋に査定し、12月に内閣が予算案を固めます。翌年度どこに予算が向かうかを示す、最も早く最も間口の広い公開情報です。
下のインタラクティブで、省庁別の全内訳をご覧いただけます。各省庁の要求額、今年度予算からの増加幅、そして新設の投資枠がどこに集中しているか。ビューアー右上でEN/JAを切り替えられます。
公式の財務省データ(令和8年9月4日)に基づくインタラクティブ可視化。米ドルは¥150=US$1で参考換算。
要点
- 要求総額: 143.07兆円(約9,540億米ドル)。過去最大で、初の130兆円超。
- 令和8年度予算比 17.0%増(122.3兆円)。
- 新設の投資枠: 上限のない「強く豊かな日本」枠で12.17兆円。要求が130兆円を突破した最大の要因。
- 国債費: 36.64兆円。最も伸びの大きい項目で17.1%増。日銀の正常化に伴い想定金利が上昇。
- 主要省庁: 厚生労働省36.58兆円(社会保障)、総務省21.92兆円(大半は地方交付税21.0兆円)、国土交通省8.96兆円、防衛省8.84兆円(計上ベース)、文部科学省8.78兆円。
- 令和8年度予算比の増加が大きい省庁: 経済産業省(投資枠=AI・半導体)、文部科学省、デジタル庁、環境省、国土交通省。
- 新設の官庁: 防災庁が初めて独立した項目として登場。
最終予算にどれだけ近いのか
「要求」という言葉が示すより、ずっと近いものです。近年、内閣の予算は各省の要求から数%の一部の範囲で着地しています。昨年度、令和8年度の要求総額は122.4兆円で、続く予算は122.3兆円、約0.1%の減でした。財務省は秋を通じて全項目を査定し周縁を調整しますが、全体の姿と各省の優先順位はおおむね維持されます。今年、最も動きやすい部分は、上限のない新設の「強く豊かな日本」投資枠です。
だからこそ要求は精読する価値がありますが、それは「何をすべきか」の捉え方も変えます。要求は、法になる前に半減する希望リストではありません。9月初旬に公表される、令和9年度の資金がどこへ向かうかのほぼ最終形の姿です。多くの組織にとって価値は、これらの数字を変えようとすることにはありません。その勝負は主に上流、数か月前の省庁の審議会や要求ルールを定めるシーリングで決着しています。むしろ価値は、資金がどこに流れようとしているかを明確に把握し、それに合わせて動くことにあります。すなわち、翌年4月から始まる年度で解放される補助金・事業・重点施策です。数字を形づくるのは、要求が公になるずっと前から始まる次のサイクルの作業です。今サイクルで既に決まったものを捉えるのは、要求を手にした今から始まります。
17%は過大に見せている:補正予算の付け替え
その17%増には見落としがあり、数字の読み方を変えます。日本の実際の年間支出は、毎春成立する当初予算だけではありません。年度途中に加わる補正予算を足したものであり、近年これは大きく、令和6年度で約13.9兆円、令和7年度で約18.3兆円でした。
令和9年度について、政府は指示を変えました。財務省の要求ルール「基本方針2026」は各省に対し、**「補正予算依存から脱却し、恒常的な施策を当初予算に計上する」**よう明記しています。つまり、従来は秋の補正で措置された支出が、今は当初予算の中で前倒しで要求されているのです。143兆円の一部は新規支出ではなく、可視化された既存支出です。その最も分かりやすい体現が投資枠そのものです。12.17兆円は、近年の補正予算にほぼ匹敵する規模を、当初で前倒し要求しているものです。
そのため、当初予算どうしの単純比較は誤解を招きます。より公正な基準は、昨年度の当初予算に補正を足すことです。令和8年度当初122.3兆円に、令和7年度に実際に組んだ規模の補正(18.3兆円)を足すと、およそ140.6兆円となり、これが分析者の採る比較対象です。これに対し、令和9年度要求143.07兆円は約1.8%高いにすぎず、17%ではありません。
いずれの見方も正しく、いずれも重要です。実質的な支出の伸びは見出しよりはるかに緩やかです。しかし構造変化は重要です。より多くの支出が、審議の少ないまま速やかに通る補正ではなく、透明で精査される当初予算に取り込まれつつあります。特定の事業を追う立場からすれば、この変化により、当初予算、ひいてはこの要求が、従来よりも実像を多く映すようになったことを意味します。
昨年度予算からの変化
令和8年度予算の成立時、私たちは詳細に読み解きました。その122.3兆円の予算に対して、令和9年度要求では三つ(と、もう一つ)が際立ちます。
- 国債費が急速に増え続ける。 令和8年度予算では31.28兆円でしたが、各省の要求は今や36.64兆円と5兆円超の増。日銀の正常化に伴い想定金利が上がるためです。昨年度からの最も明確な連続であり、裁量的経費の余地が縮み続ける理由です。
- 社会保障が増え続ける。 厚生労働省だけで36.58兆円を要求。うち約33.7兆円が社会保障(年金・医療・介護)で、同省のその他の業務(雇用・労働・公衆衛生等)は約2.9兆円にすぎません。国債費とともに、社会保障は予算の重心であり続けます。
- 補正の付け替えは真に新しい。 昨年度の実質支出は、当初予算+見込まれる補正でした。今年の要求は、従来補正が担った分を吸収するよう組まれた当初予算であり、実質的な伸びは緩やかでも規模が大きく見える理由です。
- 投資枠は事実上の補正予算。 新設の「強く豊かな日本」枠は12.17兆円で、それ自体がほぼ一本の補正予算に匹敵する規模です(令和6年度の補正は13.9兆円、令和7年度は18.3兆円)。つまり、補正一本分の支出を当初予算の中で前倒し要求したものであり、見出しが跳ね上がった理由であると同時に、昨年度予算+補正と比べた実質の伸びが小さい理由でもあります。
概算要求の読み方
- 予算だけでなく要求を見る。 要求は意図を示す最も早いシグナルであり、近年は続く予算のほぼ正確なプレビューです。確定の数か月前に読めます。
- 上限のある要求と、上限のない枠を分ける。 基本の要求はシーリングの下にありますが、「強く豊かな日本」投資枠には上限がなく、増加の多くがそこに集中します。各省が投資枠をどこに置いたかが、その年の真の優先順位を語ります。
- 国債費と社会保障をまず追う。 両者は予算の重力です。構造的に増え、裁量的経費すべてを圧迫します。
- 過小評価されている部分に注意。 防衛省は金額の伴わない事項要求を行うため、計上ベースの数字は実際の要求規模を過小に示します。投資枠の一部は特別会計にも計上されています。
- 二つの時間軸で動く。 令和9年度については数字はおおむね決まっているため、今の一手は、要求が示す資金、すなわち翌年4月から解放される補助金・事業に合わせて捉えることです。数字そのものを形づくるには、要求に先立つ審議会やシーリングの段階で、より早く関与すること。次の予算に向けての話です。
ジェミニ・グループは、審議会やシーリングから内閣の閣議決定まで、予算サイクルを各クライアントの論点に絞って追跡し、要求が示す資金を捉えることと、今後の予算を形づくるためにサイクルの上流で関与することの双方について助言します。令和9年度要求が御社にとって何を意味するか、お問い合わせください。
関連記事:確定した令和8年度予算の詳細な内訳、そして日本の政策カレンダーとサイクルのどこで関与すべきか。
よくあるご質問
- 令和9年度(FY2027)の概算要求はどのくらいの規模ですか。
- 各省庁の令和9年度一般会計の概算要求は過去最大の143.07兆円で、令和8年度当初予算122.3兆円から17.0%増です。概算要求が130兆円を超えるのは初めてで、4年連続の過去最大更新となります。ただしこれは要求であって最終的な予算ではありません。もっとも近年は両者が非常に近く、財務省が9月から査定を行い、12月に内閣が予算案を固める頃には、要求総額との差は数%の一部にとどまるのが通例です。
- 概算要求とは何ですか。
- 概算要求とは、各省庁が翌年度(翌年4月開始)の予算について、8月末に財務省へ提出する要求です。各省庁がどこに予算を使いたいかを示す最も早い公開情報であり、予算プロセスの入口で最も間口が広い段階です。その後、財務省が秋を通じて査定・調整し、12月下旬に内閣が予算案を閣議決定、翌年3月末までに国会が可決します。近年は最終予算が要求に近い水準で着地するため、実際に措置される優先事項が最初に見えるのがこの段階です。
- 日本の最終予算は概算要求から大きく変わりますか。
- 近年は大きくは変わりません。財務省はすべての要求を査定し、周縁部分を調整しますが、総額や各省の優先順位はおおむね予算案までそのまま引き継がれます。令和8年度は、各省の要求が122.4兆円で、予算は122.3兆円、約0.1%の減にとどまりました。今年の例外は、上限のない「強く豊かな日本」投資枠です。通常の要求枠より新しく規律が緩いため、最も削られやすい部分といえます。とはいえ全体としては、概算要求は希望リストではなく、予算のほぼ最終形に近いプレビューです。
- 令和9年度に最も多く要求した省庁はどこですか。
- 国債費(36.64兆円。省庁ではありません)を除くと、単一で最大の要求は厚生労働省の36.58兆円で、年金・医療・介護が牽引しています。次いで総務省が21.92兆円で、その大半は地方自治体向けの地方交付税交付金等21.0兆円です。以下、国土交通省8.96兆円、防衛省8.84兆円(計上ベース)、文部科学省8.78兆円と続きます。
- 「強く豊かな日本」投資枠とは何ですか。
- 高市政権の下で令和9年度に新設された、上限のない重点的な支出枠(『「強く豊かな日本」投資枠』)で、一般会計全体で12.17兆円にのぼります。通常の要求枠と異なり上限がなく、要求総額が130兆円を突破した主因の一つです。経済産業省が突出し、一般会計でAI・半導体・産業向けに4.5兆円を要求、エネルギー対策特別会計に別途1.8兆円を要求しています。
- 令和9年度の支出は本当に令和8年度比で17%増なのですか。
- 実質ベースではそうとは言えません。17%という数字は、令和9年度の要求を令和8年度の当初予算のみと比べたものです。しかし日本の実際の支出は、当初予算に加えて年度途中の補正予算(近年で大きく、令和7年度は約18.3兆円)を足したものです。令和9年度について政府は、従来補正で措置してきた支出を当初予算に組み込むよう各省に指示しました。したがって増加分の一部は、新規支出ではなく付け替えです。令和8年度当初+令和7年度並みの補正(約140.6兆円)と比べれば、令和9年度要求143.07兆円は約1.8%高いにすぎません。見出しは実質的な伸びを過大に見せますが、より多くの支出を透明性の高い当初予算に取り込むという構造変化自体は重要です。
- なぜ日本の国債費はこれほど急増しているのですか。
- 国債費は最も伸びの大きい項目で、過去最大の36.64兆円が要求され、令和8年度予算比17.1%増です。要因は日本の金利のプラス圏への回帰です。日本銀行が政策を正常化し、予算編成で想定する金利が上がると、新規の借入がなくても既存の債務残高の利払費が膨らみ、その他の裁量的経費の余地を圧迫します。
- 令和9年度予算はいつ確定しますか。
- 要求は8月末に提出されます。財務省は秋を通じて査定し、各省庁や与党と折衝します。内閣は通常12月下旬に予算案を閣議決定し、国会が審議して4月1日の年度開始前に可決します。9月からの内閣閣議決定(12月)までの間に残りの調整が行われますが、大きな配分は要求が公表される時点でおおむね決まっています。数字を「動かす」のは主にサイクルの上流での作業であり、要求が示す資金に「合わせて動く」のは今からです。