トランプ復権と日米関係──安定と潜在リスクのはざまで
1月20日、トランプ氏が米大統領に返り咲きます。安倍・トランプ時代とは様変わりした日米の政治地形のもとで、今後4年間の同盟関係に何が待ち受けるのかを読み解きます。
トランプ復権と世界への波紋
ドナルド・トランプ氏が1月20日に米大統領に返り咲くのを前に、世界各国の指導者は改めて問いを立てています──「トランプ氏の発言は、額面通りに受け取るべきか、真剣に受け取るべきか、あるいはその両方か」。
懸念材料は尽きません。公約した大規模関税は本当に実行されるのか。グリーンランドやパナマ運河の取得は本気なのか。中国とディールを結ぶのか、それとも既存の輸出管理を維持するのか。第2次トランプ政権下で、米国の同盟関係はどう変容するのか──いずれも、答えの見えない問いです。
日本の政治変動と変わりゆく日米関係
安倍晋三首相がトランプ氏と築いた良好な関係は広く知られていますが、日米両国とも2016年当時とは様相を一変 させています。日本では、石破茂首相 が少数与党を率いており、案件ごとに野党と協議して政策を進める立場。中国との関係改善に前向きな姿勢 も示しており、安倍外交とは一線を画します。
米国側は、ウクライナ戦争と中東紛争という二つの外交案件を抱えつつ、アフガニスタンから撤退、特にテクノロジー分野での米中競争が激化、そして国内では製造業の復権を狙う大規模投資プログラム を実行中です。
こうしたなか、今後4年間の日米関係に何が起きるのか──。
日米関係のリスクと機会
日本にとって、第2次トランプ政権は機会よりもリスクの色合いが濃い。第1期トランプ政権 は、米国の同盟国に対し「力の投射に伴う負担をより多く分担すべき」と明確に求め、加えて二国間貿易赤字にも強いこだわりを示しました。トランプ氏にとって赤字は「他国による搾取」に等しい概念であり、対米黒字が大きい日本 にとってはどちらも警戒すべきシグナルです。
一方で、次期トランプ政権にとって日本は当面の最優先課題ではなさそうです。大統領選後、トランプ氏の舌鋒は主に隣国カナダとメキシコに向かっています。次期政権で影響力を持つテック界の巨人イーロン・マスク氏 は、自身のSNS「X」上で欧州各国政府と論戦を繰り広げています。石破首相が安倍・トランプ流の親密な関係を再現するのは難しくとも、政権発足直後の段階では日米関係は比較的安定する 可能性があります。
とはいえ、潜在的な火種はいくつか存在します。
対中政策 は、両国内で摩擦の震源となり得ます。東京の当局者は、トランプ政権が日本に対し、米国と同等の機微技術輸出管理の実施を求めてくるのではないかと懸念している と報じられています。一方、ワシントンでは、トランプ氏が逆方向に舵を切り、輸出管理の緩和を含む対中ディールに動くのではないかとの観測もあります。そうしたディールが米国の対中抑止力を弱める結果となれば、日本にとっても深刻な懸念材料となります。
経済面では関税 が問題を生みかねません。トランプ氏の最も高関税が日本に直接向けられなくても、日本企業への影響は避けられない可能性があります。日本の製造業──自動車メーカーを含む──はメキシコに生産拠点 を持ち、メキシコ製品への25%関税 の脅しが波及すれば打撃は小さくありません。トランプ氏の経済政策は日本のサプライチェーン全体を揺るがしうるうえ、日本製鉄によるUSスチール買収が先頃却下 された件も、日本企業の対米大型投資への慎重姿勢を強める要因となっています。
多国間主義対「アメリカ・ファースト」
より本質的な対立軸は、多国間主義 対 トランプ流「アメリカ・ファースト」 の衝突です。現在、米議会では、国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を発行したことを受け、ICCの特定メンバーに対する制裁を大統領に義務付ける法案 が審議中です。日本はICCへの最大の資金拠出国 であり、現所長は元東京高検検事で法務省出身の赤根智子氏。ICC自体が日米関係の重大な火種になる可能性は低いものの、日本が深くコミットする国際システム そのものを、トランプ氏は強い懐疑の目で見ています。同様の摩擦は、国連、WTO(世界貿易機関)、その他「米国の利益に資さない」と判断された機関でも起こり得ます。東京はその都度、個別判断を迫られることになります。
結論:潜在リスクを抱えながらも、相対的に安定した関係
総じて、第2次トランプ政権下の日米関係は比較的安定した滑り出しとなる見通しで、他の多くの米二国間関係よりも堅牢さを保つ可能性が高いと考えられます。しかし、予兆なく水面上に噴出しうる火種 が複数存在することも事実です。日米両国で事業を展開する企業にとっては、リスクと不確実性が高まる局面を意味します。米国・日本双方での政府発信と政策実行を、これまで以上に緻密にモニタリングする ことが、難しさを増す環境を乗り切る鍵となります。
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