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圧力下の政策シリーズ:日本の未来を動かすエネルギー戦略

少数与党となった自公政権は、政策運営の綱渡りを強いられています。第7次エネルギー基本計画を巡り、野党3党(立憲・国民・維新)の立場を整理し、再エネと原子力の行方を読み解きます。

圧力下の政策シリーズ:日本の未来を動かすエネルギー戦略

はじめに

自民党・公明党の連立政権は、日に日に細くなる綱の上で政策運営を迫られています。石破首相は臨時国会冒頭の所信表明で「幅広い合意形成」の必要性を強調し、立憲民主党と国民民主党は一部政策での連携で合意しました。衆議院における少数政党の影響力は、かつてないほど高まっています。本稿「圧力下の政策」シリーズでは、野党(立憲民主党・国民民主党・日本維新の会)の政策的立ち位置を読み解くにあたり、文字どおり日本を動かす分野──エネルギー政策とGX(グリーントランスフォーメーション) に焦点を当てます。政府は3年に一度の見直しとなる第7次エネルギー基本計画 の策定作業を進めており、今後数年間のエネルギー政策の方向性を左右する重要文書となります。既に公表されている計画案は、再生可能エネルギー、特に原子力の比率拡大を柱としています。ただし今回決定的に新しいのは、少数与党という政治環境下で、野党との合意形成が不可避となっている 点です。主要野党はカーボンニュートラル達成と再エネ拡大という大方針では一致しているものの、原子力の活用拡大については立憲民主党が強く反発しており、ここが最大の争点となる見込みです。

目標設定と財源スキーム

再エネ・グリーンエネルギーの導入拡大は、気候変動対策として各党共通の認識です。もっとも野心的なのは立憲民主党で、2030年までに再エネ電源比率50%、2050年までに100%を掲げ、原発・化石燃料に依存しない形で「できる限り早期のカーボンニュートラル達成」を目指しています。核となる構想は**「再エネ中心の地域分散型エネルギー社会」** で、気候変動対策・エネルギー政策に民意を反映させる仕組みを整備しつつ、地域特性に応じた地産地消型の電力供給体制──いわゆるスマートコミュニティ──への移行を描いています。国民民主党は2030年の再エネ比率目標を40%と控えめに設定し、電動化・EV普及・CO2フリー水素・合成燃料など技術革新を梃子に、産業界に過度な負担を課さない形でのカーボンニュートラル を志向します。日本維新の会はその中間で、2030年までの温室効果ガス46%削減を掲げつつ、国民民主党と同様、産業界への過度な負担は避ける立場。「危機に強い資源大国」 という国家像のもと、企業・自治体・市民の視点を反映したグリーンエネルギー事業を推進する制度設計を目指します。

脱炭素目標達成に向けた財源投入の考え方はどうでしょうか。グリーンボンド・グリーンファンドの活用と、カーボンプライシングの導入は、各党共通の選択肢です。立憲民主党は「環境を守らずして経済成長なし」という前提に立ち、グリーンインフラの整備を通じた再エネ部門の成長と、より広範な社会変革との一体化を図ります。公約では200兆円(うち公的資金50兆円) を省エネ・再エネ事業に投じ、年間250万人の雇用創出と50兆円の経済効果を生み出すと謳っています。注目すべきは、資源輸入を年間20兆円で頭打ち にするという方針です。再エネの国内生産を促し日本経済の成長を後押しする狙いですが、保護主義的側面もあり、消費者のエネルギーコスト上昇 という副作用を招きかねず、同党が掲げる「低所得世帯支援」の福祉的エネルギー転換政策とは整合性を欠く恐れがあります。

第一野党である立憲民主党は、再エネファンド・グリーンボンド・補助金拡充による投資誘致を打ち出す一方、カーボンプライシングについては「税制全体の見直しの中で議論を継続する」と述べるにとどまり、具体性に乏しい印象です。対して国民民主党は、日本の代表的カーボンオフセット制度であるJ-クレジット をキャップ&トレード方式に拡張し、全産業での脱炭素を促す構想を示しています。DX推進を常に政策の主軸に据える同党らしく、グリーンイノベーション基金の見直しと並行し、デジタル化と脱炭素を統合する「DCNファンド」 の創設を提唱。日本維新の会も国民民主党と同様、市場原理と国際ルールに基づく排出量取引制度──特にGX(グリーントランスフォーメーション)リーグ の拡充──に肯定的。ただし財源スキーム全体については「規制改革と投資促進策のさらなる導入」という抽象的表現にとどまっています。総じて、主要野党はいずれも国家の財政資源を動員して日本のエネルギー構造を再設計する 方向で足並みを揃えていると言えます。

日本のエネルギー・ミックスに入る再エネ・グリーンエネルギー

地熱、水素、太陽光、風力(陸上・洋上)──野党各党はこれら再エネ・グリーンエネルギー源を、程度の差はあれ支持しています。最も包括的な青写真を描いているのは立憲民主党ですが、国民民主党・日本維新の会の政策立案努力も軽視できません。各党は電源構成比率や重点分野を異なる配合で組み立てており、日本のエネルギー政策の「味付け」を巡る主導権争いが本格化しています。

地熱

日本は環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア)上に位置し、温泉(と地震)の国。全党が地熱発電の活用に前向きなのは自然な流れです。立憲民主党は**「地中熱利用促進法」** の制定を掲げ、温泉資源の保全と両立する形での地熱利用拡大を目指します。日本維新の会も温泉法・自然公園法の見直し を通じて同様の方向性を提案。国民民主党は地熱への言及が最も少ないものの、賛成の立場であり、地球工学的アプローチへの関心も示しています。

水素

水素──特にグリーン水素──は、立憲民主党の運輸部門脱炭素計画の要。バス・トラック・船舶の燃料として、また航空機向けにはメタンなどのe-fuel活用を支持しています。さらに水素還元によるグリーン鉄鋼(GHG非排出の鉄鋼) 製造にも水素を割り当てる構想です。国民民主党と日本維新の会もCO2フリー水素・合成燃料の開発を支持していますが、具体的な政策枠組みの記述は相対的に薄めです。

風力

洋上風力 は野党各党が共通して推す再エネ源です。国民民主党は日本のエネルギー需要を賄うため洋上風力の活用を重視すると明記(具体策は不透明)。立憲民主党と日本維新の会はやや踏み込み、導入目標の明確化、開発加速、EEZ(排他的経済水域)活用方針の整理 の必要性を指摘しています。日本は世界第8位のEEZを有しており、この海域を洋上風力に活用することは島国・日本にとって理にかなった選択と言えます。

太陽光

太陽光への投資も各党共通ですが、最も具体的なのは立憲民主党。新築住宅・建築物の屋根への太陽光パネル設置推進、公共施設への設置義務化、農地の一時転用による「ソーラーシェアリング推進法」の検討 など包括的なアプローチを打ち出しています。立憲民主党・国民民主党は共に蓄電池・蓄電技術の強化と消費者コスト低減を重視。太陽光パネルの国内生産 は、中国の市場支配力を踏まえ、立憲民主党のみならず日本維新の会にとっても重要テーマ。サプライチェーンの確保により海外勢の影響を抑え、地域経済を活性化する という論点は、野党全体に共通しています。

原子力:立憲民主党にとっての「苦い一杯」

党派を最も鋭く分かつ争点は、原子力 です。立憲民主党は原発の稼働・新増設に真っ向から反対。対して国民民主党・日本維新の会は、日本の電力需要を満たすうえで原子力は不可欠と位置付けます。立憲民主党は**「可能な限り早期の原発ゼロ社会」** を前提に、地域特性に応じた再エネ中心の分散型エネルギー社会を構築する構えです。新増設は認めず、既存の稼働原発も段階的に停止する方針。「原発立地地域振興特別措置法」 の改正を通じて、自治体と協議しながら経済再生・雇用転換・地域振興を進めるとしています。公約には、原子力サプライチェーンで働く労働者の配置転換支援や、収益減に直面する電力会社への補助策も盛り込まれていますが、その規模・総コストは明示されておらず、実現すれば財政負担は巨額に上り、他党からの反発は必至とみられます。

一方、国民民主党と日本維新の会はいずれも、安全かつ責任ある形での原発活用拡大を主張しています。エネルギー安全保障と、電源としての安定性を踏まえ、国民民主党は原子力を日本の電力インフラの要の一つ と位置付けます。同党の3原則は、①科学的・技術的根拠に基づく厳格な運用制限、②法定安全基準をクリアし地元同意を得た原発のみ稼働、③あらゆる経路を活用した脱炭素社会構築──です。SMR(小型モジュール炉)や海上浮体式原発 など次世代炉の開発を、安全性を損なわない形で規制プロセスを合理化しつつ推進する構想を示しています。日本維新の会は、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえた慎重派。既存原発の運転期間延長や次世代炉へのリプレース時には、国・自治体・事業者の責任分担を法的に明確化する ことを求めます。興味深いのは、運用の信頼性と安全性を担保するためならば、原発の国有化を含む措置により民間事業者の負担を軽減する ことも排除しない姿勢です。総じて維新は、原子力へのガバナンスを強める立場を取りつつ、再エネ源としての原子力の価値と必要性は認めています。

気候変動という文明的課題と、カーボンニュートラル社会への移行は、世界共通の喫緊の課題です。本稿で取り上げた再エネは、日本の化石燃料への「食欲」を変える上で、いずれも重要な具材となります。野党の立場は意外なほど重なっており、むしろ原子力の活用拡大 ──自民党のみならず国民民主党と日本維新の会も推す──が、立憲民主党にとって最も呑み込み難い論点となるでしょう。日本がこれらの資源をどう配合してエネルギー政策という鍋を煮込むのか、各野党の「好み」がどこで折り合うのか──その動向は、日本の旺盛なエネルギー需要を今後数年にわたって左右することになります。

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