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政策の現場で問われるDX──少数与党下で野党は何を掲げるか

少数与党となった日本で、野党3党──立憲民主党、国民民主党、日本維新の会──のDX政策はどこに一致し、どこで分かれるのか。半導体、AI、Web3まで含めて比較します。

政策の現場で問われるDX──少数与党下で野党は何を掲げるか

「Policy Under Pressure」シリーズに寄せて

「Policy Under Pressure」は、進化する日本の政治情勢と各政策領域への影響を掘り下げる新シリーズです。前代未聞の少数与党という状況下で、野党各党は国会において大きな発言力を持つに至りました。少数政党の立場が、さまざまな分野の政策判断を形作り──時に再定義する──時代が到来しています。

本シリーズでは、主要争点に対する日本の少数政党の立場と優先順位を掘り下げ、それらの視点が国政にどのような影響を与えうるかを考察します。各回で特定分野を取り上げ、与党連立と野党勢力の間で行われうる論戦と協調の可能性を明らかにしていきます。

概況

現代史上2度目となる少数与党が、国会議事堂の中に生まれました。岸田首相退陣後の信任を得るために石破首相が打った勝負が裏目に出て、自由民主党(LDP)は衝撃的な過半数喪失となり、我々は未踏の政治海域に入り込んだ格好です。立憲民主党(CDP)、国民民主党(DPP)、日本維新の会(以下、維新)といった野党各党は、第215回国会において大きな役割を担う立ち位置にいます。

DPPは経済対策を巡り与党自民党・公明党との合意を取り付け、この対策は数週間以内に国会承認される見通しです。経済対策の内容そのものは本稿の主題ではありませんが、所得税の「103万円の壁」引き上げや、物価高対策として低所得世帯・子育て世帯向けに補助金を拡充するという取り決めは、自民党がDPPという「ダンスパートナー」を見出した(少なくとも2024年12月と2025年1月の予算審議までは)ことを示唆します。もっとも、DPPは公明党と異なり、政府の全施策を支持する義務は負いません。自民党にとって政治的不安定は続くことになります。

野党が従前の国会以上に存在感を発揮するこの時代において、本シリーズでは各党の一致点と相違点を分析します。これらの政策上のポジションが、政府との協調の余地と、摩擦が生じうる論点を指し示します。以降の記事では、2024年総選挙における各党の公約を分析の土台としつつ、主要な政策テーマを扱っていきます。

デジタル変革(DX)

第4次産業革命(デジタル革命)が真っ只中にある今、主要3党がいずれも、現代社会を抜本的に再定義しつつある技術革新を日本がどう取り込むべきかについて、それぞれの構想を持っているのは当然と言えます。CDPは、「誰ひとり取り残さない人に優しいデジタル社会」を育てるという枠組みの下でDX政策を展開。高齢化社会の下で技術進化を完全には追いきれない層を想定し、「デジタル・ディバイド」を生まないよう全体最適の姿勢をとっています。第4次産業革命の領域にある産業政策の強化に加え、詳細は曖昧ながら、日本を第5次産業革命に備えるための人材育成とインフラ整備も支持。最大野党として、ICT(情報通信技術)が人々の暮らしを豊かにする役割を明確に認識し、包摂的な未来を築こうとしています。

DPPは、先端技術を日常のあらゆる場面に取り込み、日本人が繁栄する人間中心の社会「Society 5.0」の実現を目指しています。IoT(モノのインターネット)を活用し、データ駆動型の政策とプロセスで第4次産業革命の力を引き出すビジョンを描き、産業・学界・政府のあらゆる階層における相互接続の醸成を通じて、国際競争力のある日本産業の創出を志向しています。これを実現するため、DPPは研究開発補助金の拡大と、ITおよびIoT(特にソフトウェアとサイバーセキュリティを重点)への政府予算の優先配分を主張しています。

「維新」を党名に掲げる日本維新の会は、技術革新が花開き育つ競争的環境を日本に築くことを志向しています。2024年公約では第4次産業革命を明示的には挙げていないものの、AIには極めて強気(後述)です。ガバナンス面では、「デジタル歳入・給付庁」の創設など政府機構の整備により、政府・社会全体のデジタル化を一層推進する、安全で繁栄するデジタル社会の構築を目指しています。

3党いずれもが、新たなデジタル時代における人間性の維持に重きを置いています。国際的にも最も影響力のあるデジタルプライバシー法制として知られるEUのGDPRに整合する形でCDPが提案するデータ保護や、各党が掲げるサイバーセキュリティの優先順位は、衆議院での野党間協調の土壌となり得ます。一方で、「デジタル・ディバイド」の解消を議論の中核に据えるCDPに対し、DPPと維新の言説では同論点の重みは相対的に小さい──この違いは、今後の政策展開に影響しうる論点となります。

デジタル経済を支える──半導体、デジタル課税、AI、Web3

DXに関する野党の基本スタンスを踏まえた上で、デジタル産業政策をより深く見ていきましょう。どの党もデジタル経済への補助金や投資の拡大を求めていますが、そのアプローチは異なります。共通するテーマの一つが半導体の国内生産促進です。世界的な緊張の高まりと先端製造業の国内集約の流れを背景に、技術革新のリーダー(あるいはそれを目指す者)として、日本がAIなど革新的技術の根幹となる半導体分野の一角を押さえに行こうとするのは当然の帰結です。主要野党は国内生産の後押しを求めており、与党自民党・公明党もこの方向性を共有しています。2024年度補正予算でさらなる財政支援が盛り込まれる可能性が高いと見られます。

もう一つの一致点は、巨大な国際IT企業への課税強化です。CDPとDPPはいずれも国際課税枠組みを厳格化し、これら企業が応分の負担をするよう求めています。維新は公約で直接言及していないものの、この点についてはCDPやDPPの主張に共鳴する──少なくとも耳を貸す──姿勢を取ると想像できます。

フィンテックに関する記述はDPPの公約には見当たりませんが、CDPと維新はいずれもイノベーションと成長を可能にする規制環境の整備を掲げています。CDPは「消費者保護」の立場から、消費者保護と啓発を確保しつつフィンテック分野の振興を目指すとし、維新は銀行・証券・保険各分野の規制改革を通じた金融サービスのイノベーション促進を支持しています。

AIは、生活と労働の形を根本的に塗り替える可能性を秘めることから、各党がいずれも扱うトピックとなっており、中でも維新が最も紙幅を割いています。CDPにとって、AI開発では規制とイノベーションのバランスが鍵であり、社会的規制のルール策定を推進するとともに、倫理的配慮の導入、著作権侵害防止策、そして誤情報・監視・差別の拡散への対策を掲げます。CDPとDPPはいずれも国際基準と規制調和を重視。DPPは「イノベーションを妨げない規制」を主張していますが、公約では肉付けが乏しく、規制緩和寄りのAIスタンスを示唆する可能性があります。興味深いのは、DPPがAIにおける技術流出の監視・規制、および外資による技術系企業買収の監視・規制の立法を目指している点です。自民党との協調関係が進展しつつある中、この保護主義的スタンスが具体的政策として固まる可能性があります(もっとも、与党自民党のAI白書には、そのような立場を示す記述は見当たりません)。

維新はその党名に違わず、AIの開発・実装に真剣な検討を重ねています。「オープン・バイ・デフォルト」の原則──特に正当な理由がない限りデータは公開する──を掲げ、日常生活と政府業務の全領域でAIを活用する構想を描き、日本がAI産業の国家戦略を策定することを支持。AI時代向けの「アジャイル・ガバナンス」モデルを推奨し、生成AIに関する事業者の自発的取り組みと説明責任を促進しようとしています。維新にとって生成AIは、少子高齢化に直面する社会のイノベーションを加速し、生産性を向上させる手段です。人間性とユーザーの主体性を重視する姿勢も見られ、AIを安全かつ責任ある形で使いこなすための人材育成を支持しています。

維新がAI統合を大胆に進めようとする一方、2024年公約に基づく限り、CDPは飛び込みにやや慎重な姿勢が見受けられ、DPPはその中間です。これが今後の政策にどう反映されるかは未知数ですが、パラダイムシフトをもたらすこのイノベーションに、各党が政策リソースを割いていることは間違いありません。

もう一つ議論の対象となっているのがWeb3(ブロックチェーン関連技術)の発展です。野党3党はいずれも暗号資産の税制見直しを求めており、DPPと維新は具体案を示しています(例えばDPPは、現在の雑所得課税から20%の申告分離課税に改め、3年間の損失繰越控除を認め、暗号資産同士の交換は非課税とすることを求める。維新は現行の雑所得課税から譲渡所得課税への変更を主張)。デジタル通貨としての暗号資産は各党の公約で取り上げられていますが、熱量には差があります。CDPは日銀の中央銀行デジタル通貨(CBDC)実証実験と研究の推進を支持するにとどまる一方、DPPは円を法定デジタル通貨化するとともに、地域経済活性化のため「デジタル地域通貨」(仮称)の発行を自治体に認める構想を打ち出しています。維新は規制サンドボックスや特区を通じてCBDCの発展をさらに進め、導入目標期日を設定したCBDCの導入を検討するとしています。3党のいずれも他国に遅れを取らないとの姿勢を共有しており、これが政府をより積極的なデジタル通貨導入に向かわせる圧力となりうる状況です。その他のWeb3政策として、CDPは分散型自律組織(DAO)の法人化を認め、その法的地位と構成員・参加者の権利義務を明確化する法制整備を掲げ、維新はコンテンツ産業を支援するためNFT(非代替性トークン)活用に関する立場を打ち出しています。Web3で最も練られた政策観を持つのは当然、維新ですが、「日本が遅れを取ってはならない」という信念は、各党のデジタル産業政策に共通して流れています。

やや脇道ながら興味深い点として、3党いずれもがeスポーツ(コンピューター・ビデオゲームによる競技)の発展を求めています。CDPは「すべての国民のためのスポーツ」の実現に向けて取り組むとし、若年層における競技ゲームへの関心の高まりに注目しています。DPPはeスポーツを地方創生の機会と捉え、主要都市圏以外への来訪者とその経済的効果を呼び込むため、地方各地での大会開催を後押ししようとしています。維新も国際eスポーツ大会の集客力を認識し、官民連携で日本におけるこうした大会の開催を促進すべきだとしています。

おわりに

主要野党3党のデジタル政策を分析して見えてくる大きなテーマが、「他国に遅れを取らない」という問題意識──つまり、デジタル・イノベーションの創出・導入において日本が後塵を拝さないようにするという意識です。CDPのように「研究・分析」段階に近い党もあれば、DPPや維新のように第4次産業革命の潜在力を解き放とうと待ち切れない党もあります。CDPが第4次産業革命の潜在力に全面的に賛同していないという話ではありませんが、DPPや維新に比べると政策的には攻撃性に欠けるのは確かです。人間中心のデジタル政策という要素は各党公約に共通して響いており、これが日本政府のデジタル政策全体の展開に影響を及ぼしていくでしょう。与党との協調の余地は多岐にわたり、第4次産業革命が生み出すイノベーションの恩恵を最大限に享受するために日本が向かうべき方向について、各党は相違点より一致点の方が多いというのが実情です。

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