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優先順位付け:PAの成功を支える土台

優先順位付け:PAの成功を支える土台

執筆:Dr. Alan Hardacre & Dr. Paul Shotton

優先順位付けは、私たちの7ステップ・メソッドの第1ステップであり、その後のすべての実務の土台となります。ここを正しく行えば成功への軌道に乗り、誤ればキャンペーンは出発点から失敗への道を歩みはじめます。グローバル事業を展開する日本企業として、政策環境におけるリスクと機会を漏れなく捕捉・優先順位付けできているでしょうか。日本市場への進出を検討する外資企業として、新しい市場での関与先を分析し選び抜いているでしょうか。そして、事業上もっとも重要なものに沿って戦略とレポーティングを構築できているでしょうか。詳しく見ていきましょう。

パブリックアフェアーズ実務者の多くは、優先順位付けで躓きます。抱える論点が多すぎ、競合する優先事項が多すぎ、そしてその半分にも対応できないだけの時間とリソースしかない、という状態に陥りがちです。「すべてが優先」であれば、優先事項は存在しない のです。優先課題の特定・分析・選定は、家を堅牢な土台の上に建てるのと同じです。キャンペーンには、慎重に選び抜かれた限定的な優先事項という強固な土台が不可欠です。端的に言えば、ターゲットを絞った優先事項リストを管理できなければ、アドボカシーで成果を出すことはできません。グローバル、あるいはリージョナルな展開をしている組織ほど、この重要性は高まります。

優先順位付けは、まず何よりも アドボカシー戦略を最適化するための批判的思考のプロセス です。正しいタイミングで正しい対象に集中することで、組織にとって最大のインパクトを生み出せるようにします。モニタリング、レポーティング、キャンペーンのすべてがここから組み立てられます。優先順位付けは土台なのです。同時に、フィードバックへの適応性も担保します。見落とされがちながら決定的に重要な要素は、優先順位付けには 「やらないこと」や「他者に任せること」に関する厳しい選択 が伴う、という点です。優先順位付けによって、どのようなインパクトが生じ、どのような行動とアクティビティが必要で、何にどれだけのリソースを割くかという戦略的理解が深まります。そして最後に、優先順位付けは 組織の優先事項とアドボカシーの優先事項を明確に結び付ける ために不可欠です。そのためには、組織内で「本当に重要な何か」に関する実質的な対話が必要です。優先順位付けのプロセスは、優先事項だけでなく、測定可能なKPIを伴うSMART(Specific/Measurable/Achievable/Relevant/Time-bound)目標も生み出すべきです。

優先事項のインパクト分析

まず 優先事項 について。優先事項の評価には、外部環境の変化が組織の収益と規制環境に与えうる影響を少なくともカバーする、厳密なインパクト分析が必要です。出発点は、何が起きているか、何が組織に影響(ポジティブ・ネガティブ)を及ぼしうるかを理解するためのモニタリング&マッピングです。どの政策が組織にとって何を意味するかを把握して初めて、ランク付けが可能になります。インパクト分析は、慎重に選定された指標と、それを測定する有効な手段があって初めて機能します。これについては後述します。指標と並行して、組織内で 堅実な対話を行うプロセス も必要です。専門委員会を設ける企業もあれば、経営会議で扱う企業もあります。この対話は、商業的ランクを付した政策論点に対し、実現確率と、自社が影響を及ぼしうる可能性(リソースに依存)のバランスを取ることを目的とします。これにより、共通の優先事項の背後に、商業的重要度に応じてリソースを効果的に配分する整合性のある戦略を定義できます。対話は組織内の支持を構築し、長期的な成功には不可欠です。

では、優先順位付けにおいて取るべきステップは何でしょうか。

事業部から情報を収集・整理するためのフォーマットやツールが必要です。1か国の場合は比較的シンプルに、複数市場ではより複雑になります。特定された各論点について、少なくとも以下の3つの指標を測定すべきです:

  • インパクト:その論点が事業・規制にどのような影響を与えるか。
  • 実現可能性・時期:どの程度の確率で、いつ実現しうるか。
  • 影響力:自社がその論点に影響を及ぼせる可能性はどの程度か。

インパクト分析のデータは、ビジュアルでマッピングするとよいでしょう。例えば、Excelテンプレート(優先順位マップ) を使えば、以下のようなマトリクスが生成できます。

優先事項のインパクト分析

無料ツールで、自社向けの優先順位ビジュアルを作成できます: https://www.advocacystrategy.com/approach/step-1-prioritise/

さらに踏み込んで分析すると、各論点が組織に与えうる潜在的インパクトが具体的に見えてきます。優先順位付けは、明確な俯瞰図を提供してくれます。

優先事項のインパクト分析

主要論点についてこうした厳密なインパクト分析を行い、ビジュアルで示すことで、組織内の議論はより事実に基づき、商業的ニーズと整合するものになります。東京からグローバル運営を管理する場合でも、日本への進出を検討する場合でも、最も重要な論点、そしてレポーティングに含めるべき論点に集中する ことができます。リソースを投下すべき領域の意思決定も容易になり、自社が主導すべき論点と、業界団体など現地パートナーに任せられる論点の切り分けも判断しやすくなります。

優先順位付けの分析では、現地環境固有の要素を考慮する必要があります。たとえば日本では、より長いタイムライン、異なる形のステークホルダー・エンゲージメント、そしてレピュテーションリスクに伴うより重い帰結 を想定する必要があります。高度に制度化された日本社会において、「いつ前に出て、いつ時間に任せるか」を見極めることは優先順位付けの重要な要素です。こうした固有要素の影響が大きい案件では、現地環境に精通したパブリックアフェアーズ・アクターの知見が、優先順位付けの成功に不可欠となります。Gemini Groupは、日本市場についてまさにこうしたノウハウを提供します。

成功する優先順位付けのためには、3つの黄金律をご提案します:

  1. 適切な社内プロセス を整え、主要ステークホルダーとともに、(ⅰ)想定されるインパクト、(ⅱ)集中すべき領域について完全な整合を取ること。
  2. プロセスを終えたら、リソースを最大でも3〜5の大きな攻めの優先戦闘 に集中させること(リソース次第)。それ以外もモニタリング・対応可能だが、一度に多くに焦点を置かないこと。
  3. 3〜6ヶ月ごとに優先事項を見直す こと。事業ニーズや組織の優先事項と整合が保たれているか確認する。

優先事項を「目標」に落とし込む

次に、優先順位付けのプロセスは優先事項を 目標 に落とし込む必要があります。これは、組織と合意した目標をどう実現するか、つまり「HOW」の設計です。HOWは、合意した優先事項に影響を及ぼし成果を届けるための戦術・アクティビティに焦点を当てます。HOWは事業側(WHATに関心を持つ)にとっては優先度が低い場合も多いものです。集中すべき成果をどう実現するかを示す、堅実なPA目標に分解する必要があります。業務の多くは測定・追跡・評価・レポーティングが可能であり、それを通じて「実行できている」ことを示せます。成功している領域と、将来に向けて改善すべき領域を理解することが重要です。

すべてのアドボカシー活動・キャンペーンには、十分に検討され、ストレステストを経て、社内で整合が取られ、対外的に現実的な目標が必要です。目標設定は計画プロセスです。アドボカシー成功のための目標定義には、2つの柱があります。第一に、優先事項をKPIを伴うSMART目標に翻訳すること。第二に、それらを整合的にカスケードし、誰が何を・いつ行うかを明確にすることです。

優先順位付けと同様に、目標・アウトカム・アウトプットの設定も 文脈に敏感 です。環境によってアウトカムへの期待値は異なり、アウトプットの有効性も変わります。たとえば日本における会議は諸刃の剣です。適切なステークホルダーとの会議は論点を前に進める上で不可欠ですが、形式主義的な手続きに陥ると進捗を遅らせることもあります。本音と建前 の構造を読み解き、丁寧な会話の裏にある真意を解釈するには、現地での経験が必要です。どのアウトプットがアウトカムの実現に効くかを見極めることが、現実的な目標設定の肝です。APAC地域を横断的に担当する場合、現地ごとの目標にこの感度を織り込む必要があります。ある国で有効な目標が、別の国では機能しないことがあるためです。

日本企業、日本市場への新規参入企業のいずれにとっても、以下の土台(優先事項、目標、KPI)を整えることで、日本からも、そしてグローバルの拠点全体でも、より成功するアドボカシーを実践できると確信しています。明確な優先事項を設定・合意する(変化に応じて適応する仕組みとともに)ことで、リスクと機会の商業的な俯瞰図がより鮮明になり、もっとも重要な論点のレポーティングに集中できるようになります。現実的でありながらチャレンジングなSMART目標を構築することで、期待値を管理し、成功への道筋を明確に保てます。私たちのリソースは常に限られています。だからこそ、組織への影響が最も大きい優先事項に賢く投下する必要があります。

日本企業・日本市場への新規参入企業への、優先順位付けにおける主な推奨事項:

  1. 優先事項を特定・分析・整理する 堅実なプロセス を整えること。優先順位マッピングに関する 無料ツールとエクササイズヒートマップ を含む)をお試しください。良い社内対話が必要です。
  2. 優先事項をビジュアル化 すること。チームや組織に伝えるうえで極めて重要です。ビジュアルは焦点を保ち、他者への説明を容易にします。
  3. 業界団体、コンサルタント、その他のパートナーを通じて、どのように 委任・分担するか を検討すること。リソースは有限であり、集中が肝要であり、連携には数の力があります。
  4. 優先事項と目標を、PA計画プロセスの基盤 として活用すること。既存のレポーティング・プロセスと強く結び付けましょう。戦略と進捗の共通ビューを確保するため、スコアボードやダッシュボードの導入をご検討ください。

今後の投稿では、続く各ステップを順に解説し、この構造的アプローチが、日本企業および日本市場を検討する企業のローカル/グローバルPAにどのように価値を加えるかをお示ししていきます。

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著者紹介

Dr. Alan Hardacre — アドボカシーとパブリックアフェアーズの国際的な専門家。Imperial Brandsのグループ・コーポレート・アフェアーズ担当ディレクターとしての経験をもとに、CropLife Africa & Middle Eastや欧州タイヤ・ゴム製造業者協会(ETRMA)などへ幅広いコンサルティング経験を提供。Loughborough大学で国際経済・政治関係の博士号を取得。

Dr. Paul Shotton — ブリュッセルを拠点とする Advocacy Strategy および Advocacy Academy の共同設立者。メディア、業界団体、企業、NGO、アカデミアを横断した20年以上の実務経験を持つ。ナンシー第二大学で情報・コミュニケーション科学の博士号を取得。