ステップ2:情報収集
アラン・ハーダカー、ポール・ショットン
前回のブログでは、PA活動の優先事項、目標およびKPIに関する最善のプロセスについて私たちの見解をお話しました。「優先順位付け」は、アドボカシー戦略における主要な土台です。優先順位付けによって境界を明確にし、今回の情報収集に関する投稿を含め、アドボカシーのあらゆる側面から、近い将来のマイルストーンを設定することができるからです。優先事項と目標により、情報収集および重点を置くべき限られたリソースの範囲を明確にします。範囲が狭いほどリソースは少なくなり、情報収集の質が高まります。ただし、日本企業が世界展開に必要とされるグローバルモニタリングや情報収集をしようとしている場合は特に、困難な課題となり得ます。今回の投稿では情報についてお話していきます。
アドボカシーの優先順位付け、アドボカシー戦略、および活動を知らせるには、効果的な情報収集、すなわち相応しいタイミングで適切かつ見識のある情報を入手する必要があります。情報により、理解とフィードバックが得られます。アドボカシーの成功は、適切な相手に、適切な場所で、適切な時間に、適切な情報で話をすること。そうすれば、効果的な情報収集の重要性を理解できることでしょう。情報や知識が不正確、またはタイミングが悪い、あるいは政治的現実を無視すると、アドボカシー活動を成功させることはできません。
最初に行うべきことは、優先事項のフレームワークを確立して、実行すべきモニタリングの範囲かつ重要性を把握できるようにすることです。例えば、優先度の高い項目では詳細な情報が必要になりますが、優先度が低くなれば、より手軽な情報を求めるようになるでしょう。
情報には、モニタリングと政治情報の2つのタイプがあります。モニタリングは通常、オンラインまたは(ソーシャル)メディアで公開されている情報の収集と分析です。政治情報は、政治機関からの非公開情報の収集と分析です。非公開情報とは通常、会合、会話、または関係筋からの情報のことです。ネットワーク、イベントへの参加、役人、選出された代表者およびジャーナリストとの対話を通じて得るべき価値の高いリソースです。
公開されている情報は、生データとして扱い、分析と検証が必要です。公開情報からは基本的なことが得られます。出来事の順序、何が起こったのか、何が起こるのか、何が言われ、何が書かれたかについてです。すなわち、出来事のタイムラインと他者による決定を把握することができます。ただし、動向を追うのは受動的なアプローチです。積極的かつ建設的な役割を果たすこと、意思決定に影響を与えることには、政治プロセスへの関与および有益な政治情報が必要です。モニタリングと政治情報の両方を組み合わせることで、成功の可能性を最大化し、受動的な情報収集から自発的な情報収集へと変えることができます。
公開されている情報に対しては、コストや手間をかけずに質の高い情報データを生成できる、強固なモニタリングシステムの構築が可能です。事実、問題は情報不足ではなく、インターネットや(ソーシャル)メディアからアクセスできる情報過多にあります。そこでAIの活用です。公開されている情報の収集、処理、分析およびパッケージ化は、AIが得意とする分野のひとつです。グローバル展開している日本企業にとって、PA活動の情報管理には、AIの活用が大きなチャンスとなります。AI活用の有無に関わらずとも、無駄な情報から重要なシグナルを読み解く知識、情報の流れをモニターするシステム構築が鍵となります。すなわち、重要なデータを分析し、残りを破棄することです。このフィルタリングについては後ほどお話します。
情報収集と分析によって、優先順位付けプロセスおよびポジショニング作業を結び付けることができます。焦点を定めた一連の優先事項かつ目標に基づき、ポジショニングおよびアドボカシーを設定する知識と理解を得ることができます。情報を変換する際は、次の点を考慮してください。
誰が関与したのか。 誰が担当なのか。 誰に影響するのか。
何が起こったのか。 どのような決定だったのか。 何を知っておくべきなのか。
どこで起こったのか。どこから影響を受けているのか。どこで詳しい情報を入手できるのか。
次に何が起こるのか。
なぜ起こったのか。
なぜ起こったのか。どのように起こったのか。どのように決定が下されたのか。 どのような影響があるのか。 社内外に対してどのようにコミュニケーションをとるのか。
社内で報告しようとする際は、報告、情報収集のフレームワークを考えることが極めて重要です。では、順に見ていくことにしましょう。まず報告に関しては、次のように、組織に適した社内用テンプレートを考える必要があります。
何が起こったのか。
組織にとって何を意味するか。
次に何が起こるか。
何をしているか / どのような行動を取るのか / 取る予定か。
このようなシンプルな報告体制は、大きなインパクトを与えることができる。もちろん、組織の文化(どの程度詳細な情報が必要かなど)に合わせて調整する必要はあるが、共通の報告構造は理解を助け、信頼を醸成する。第二に、インテリジェンスは、モニタリング・レポート(何が起きたか)以外にも、イシュー・タイムライン(適切な時期)、ステークホルダー・マップ(適切な人物)、ポジション・ペーパー(適切な情報)など、多くの重要なアドボカシー文書に反映される。情報収集は当初から、主要なアドボカシー文書のための洞察を提供する必要があります。これをインテリジェンス・フィルターと考えよう。重要なのは、自社に合った明確な構造とプロセスを持つことだ。グローバルに事業を展開する日本企業として、この仕組みとプロセスを適切にすることは、必要な時に必要な情報を確実に入手するために極めて重要である。日本市場への参入を目指す企業にとって、迷路のように入り組んだ日本政府の書類は大変に思えるかもしれないが、これらの情報を解析するための最初の足がかりを作ることは、将来的に大きな利益をもたらすだろう。
何を戦略的に考慮し、何を除外するかを判断するフィルタリングこそが、情報収集を成功させる主要なパートです。適切なフィルタリングとは、事前に決断した優先事項や目標に関わる重要な問題の情報のみを送信するシステムです。これこそが、構築すべき構造とプロセスです。その後は定期的に、例えば6ヶ月ごとに繰り返しレビューとアップデートを行います。そして情報を受け取る人物と連絡を取ります。情報に関連性はありますか?優先事項に十分焦点を合わせていますか?適切に構成され、適切に提示されていますか?頻度は適切ですか?ぜひフィードバックを受けてください。
このような監視と情報提供のおかげで、あなたはいつ行動すべきか、何を言うべきか、誰と話すべきかを知ることができる。これにより、アドボカシー活動の準備が整います。イシュー・トラッカー・テンプレートをご覧ください。重要なアドバイスがまとめられており、意思決定を支援するために情報データを整理するための表が用意されています。効果的なモニタリングと情報収集の真の課題は、あなたのリソースと予算の制約の中で、あなたに合った構造とプロセス、テンプレートを見つけることです。
成功するためには、適切なモニタリングと政治情報を組み合わせること、よく考え抜かれ、組織に合わせて調整された構造、プロセスおよびテンプレートにフィルタリングすることが必要です。この取り組みへの投資が不十分だと、アドボカシーと社内の信頼性の両方が損なわれます。多くの政府、企業、コンサルタント会社、業界団体、NGOは、独自の情報収集および分析システムを開発しています。これらのシステムは、関連のある進展をカスタマイズされた形式でフラグ付けし、必要に応じて事前に実行できるようにするものです。しかしながら、政府、EU加盟国、EU非加盟国、業界関係者およびNGOの多くは、重要な政策、タイムライン、またはステークホルダーの進展を頻繁に見逃しています。また、ほとんどの組織には、効率的な社内用報告体制およびテンプレートがありません。グローバル展開している企業にとって、適切な情報を適切な形式で入手することは、商業的かつ競争上の強みとなります。
最後に、情報収集に関する私たちの実践的なアドバイスについて、重要なポイントを要約いたします。
関連性:まず、情報収集は優先事項と目標に合わせること。少なくとも6ヶ月ごとに優先事項と情報出力を見直し、すべてが優先事項と一致していることを確認します。見直すことで、重要なことのみに集中して情報収集することができます。
構造と形式:情報の報告に関する構造と形式について、時間をかけて考えること。最も効果的なものは何ですか?最も簡単な方法は何ですか?正しく行うことで、時間とエネルギーを節約できるだけでなく、専門的な視野を広げることができます。
バランス:モニタリングと政治情報を区別し、公開情報と非公開情報をどのように入手するのか明確に把握すること。成功には両方が必要です。
テンプレート:情報収集には、最新のタイムライン (タイムラインがあることを確認してください)、ステークホルダーマップ、問題の更新、およびアドボカシープラン (情報が伝える内容に基づく) を反映させること。情報分析によって定期的にアップデートする必要がある重要な文書リストを作成し、リストをアップデートするプロセスを明確にします。
今後のブログでは、7 ステップ・アドボカシー・メソッドのその後のステップについてお伝えします。構造化よってアドボカシーが成功する可能性が最大になると私たちは強く信じているからです。優先事項と情報収集が適切であれば、強固な土台を築くことができるはずです。
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著者プロフィール
アラン・ハーデイクル博士は、アドボカシーおよびPA活動の分野で名高い専門家であり、トップレベルのPA活動の策定と提供する。Imperial Brandsのグループ企業広報担当ディレクターとしての経歴を持ち、CropLife Africa & Middle EastやEuropean Tyre and Rubber Manufacturers Associationなど幅広いクライアントにコンサルティングを行う。Loughborough大学にて国際政治学および政治学の博士号を取得。
ポール・ショットン博士は、ブリュッセルのAdvocacy Strategy and Advocacy Academyの共同創設者であり、イノベーションを通じたアドボカシー実務の専門化を推進、またリサーチと実践の橋渡しに尽力している。ブリュッセル、ロンドン、ハーグで20年以上にわたりメディア、業界団体、企業、NGO、学術分野で活動してきた経験を持つ。専門家や学生と共にアドボカシー活動を探求するという強い情熱が、アドボカシーのプロセス構築およびベストプラクティス追求への原動力となっている。フランスのNancy 第2大学にて情報コミュニケーション科学の博士号を取得。